「キャンピングカー 貸してくれへん?」
兄から発せられたこの一言から、この奇妙で、それでいてこれまでの人生の中でもトップクラスに印象深い一連の出来事は始まった。
「ん〜(え?中古で古いしボロボロやけど大丈夫かな?でもまぁ…)、いいよ!」
兄はロケットが好きだったらしく、種子島で新型ロケットの打ち上げがあるから見に行くらしい。しかし、人気の為、宿が取れず、おまけにレンタカーも全て借りられている為借りられないらしい。
私は今までロケットに全く興味がなかったが、ファンは多いようだ。
更に兄は、自身が園長をしている幼稚園と学童保育(徳島県)の子ども達も数名連れて行くという。
そんな無茶な(笑)。
以下箇条書きで事の顛末を書く。
往復キャンピングカーで子ども達と行こうとする
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鹿児島から種子島へのフェリーでの車の輸送が打ち上げ前後は満車の為予約不可
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打ち上げ数日前にキャンピングカーを種子島に運び、打ち上げ数日後に取りに行くと言い出す
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1人で3往復は大変やろうから持って行くのだけならやるよと兄に言い了承される
(自分が旅に行きたかっただけ。ラッキー!!)
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会社に来週一週間休むと伝える(理由を聞かれる事もないしOKと言われるだけ。ある意味超ホワイト)
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兵庫県から種子島までのんびり移動
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種子島にて車中泊スポットや打ち上げ見学スポット、温泉、スーパーなどの情報を集め兄に伝える
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種子島に車を置いて新幹線で帰宅
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数日後、兄と子ども達が種子島に上陸
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当初、車中泊は1泊の予定だったが打ち上げが延期したために長期戦に突入
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打ち上げ当日(2月17日)、リフトオフの0.4秒前に緊急停止
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種子島を出発。キャンセルが出た為フェリーに車を載せて徳島へ帰る
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兄が徳島につく時間に合わせて車を取りに行く
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車が家に帰りつく
以下の動画は兄と子ども達の保護者向けに作った動画
ここから子ども達のターン(兄のブログ)
2月17日の打ち上げを会社でコソコソと見ていた。一瞬なにが起こったか分からなかった。これまでロケットには全く興味がなかったが、この旅を通じて多くのことを知っていたし、兄や子ども達、日本中から駆けつけた人々、ロケットを作った人達のことを思うと胸が張り裂けるようだった。
日本の宇宙関連予算はアメリカの10分の1、欧州の4分の1で、大型ロケットの新規開発は30年間止まっていた。進んでいる国はロケットを打ち上げまくり、失敗しまくり、技術を進化させ、大型化や低価格化、さらに、イーロンマスク率いるスペースX では、一般的に使い捨てにされているロケットを着地させ再利用するという異次元の域に達してる(参考)。
私も、仕事でプラントなどで使われる圧力容器を作っているので分かるが、人間のすることに絶対と言うものはない。物作りは、経験を重ね、失敗を重ね予測精度を上げていく。それでも、絶対はない。
H3は30年ぶりの新規開発。その試験1号機に約400億円の実用衛星を載せるという極限のプレッシャー。
どんな物も、一つの視点からだけでは、その全体像を知ることは出来ない。近くから見たり、遠くから見たり、上から見たり下から見たり、くるくる回してみたり。そうしてようやく、その物の持つ特性がつかめてくる。そしてそれは、単純と言えば単純で、複雑と言えば複雑。簡単でもあり、難しくもある。常に矛盾を内包しているものだ。
「日本の技術は衰退している」
「税金の無駄だから宇宙開発を止めるべき」
そういった意見も私は理解できる。
私はみんなに聞いてみたい。
「あなたは何の為に生きているのですか?」と
私には、何の為に地球があって、人類がいて、宇宙があるのか分からない。生まれた瞬間から死ぬことが決定し、死に向かって進みだし、誰一人としていつどこでどうやって死ぬか完璧に予測することは出来ない。
私は、やりたいことを、やりたいようにやっている。
ある意味では、みんなもそうなのだと勝手に思っている。
小さい頃からロケットを作りたくて、夢をかなえた人もいるだろう。成り行きでロケットを作ることになった人もいるだろう。
技術は探求すればするほど高まっていくだろう。果たして、人類の意識はその技術に見合うだけ成長しているだろうか?
今回失われた「だいち3号」には、日本に飛来するミサイルをより高精度に補足できるようにする為の研究用の装置も搭載されていた。
未来で、そういった装置が実際に使われるようなことが無い事を心から願う。
兄は3月7日の打ち上げも見に行った(ようやるわ(うらやましい))。
今回ファンになったロケット工学Vtuber宇推くりあさん
2月17日には、エンジンが止まった直後に「緊急停止だなぁ」と言ったり、3月7日も異常に即座に気付きその後号泣しながら思いの丈をぶちまけたり本当にすごい。ぜひ一度見てみてください。
45:18に兄の幼稚園「ナーサリー富田幼児園」のロゴが出てきます。